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白州の森の中にあるお菓子工場。素材を生かしたお菓子づくりは、花崗岩が育む水から始まった。

こんもりとした森のなかに佇む大きな建物。これ、なんだと思いますか?

答えは、山梨県にあるシャトレーゼの白州工場です。

冷菓の工場としては国内最大規模を誇り、シャトレーゼのシンボル的な場所にもなっています。

白州は、山梨県の北西部に位置する南アルプスに連なる甲斐駒ケ岳のふもとにある地名で、標高は700mほど。夏は避暑地として人気がある一方、冬は氷点下も珍しくないエリアです。

それまでもシャトレーゼは山梨県内に本社を併設した工場をもっていましたが、平成6年、新たに冷菓を中心とした工場として建設されました。

では、こんな一見すると不便そうな森のなかに、なぜシャトレーゼは工場を建てたのでしょうか。

自然の恵みを求めて、白州に工場を建てた

山梨県の中心地である甲府盆地から、晴れた日に北西方面を見渡すと、南アルプスの北の端に甲斐駒ケ岳を望むことができます。

山登りが好きな人にはお馴染みの山で、「かいこま(甲斐駒ケ岳の通称)が見えるところに住みたい!」と、山梨県に移住してくる山好きもいるのだとか。

たんこぶのような独特な形の山頂は、夏でも白く雪をかぶったように見えますが、これは雪ではなく花崗岩(かこうがん)の白い岩肌が見えているからです。

甲斐駒ケ岳を源流とする尾白川渓谷も、キャンプやトレッキングに人気のエリアですが、実際に行ってみると、景観の清涼感とダイナミックさに圧倒されます。

この迫力をつくりだしているのは、豊富な水量とゴツゴツとした岩。そして清涼感を作り出しているのは、水の透明度と花崗岩の白い色です。

花崗岩とは、マグマが地中5〜10kmの深いところでゆっくりと冷えて固まった深成岩の一種で、ゆっくりと冷えることで結晶が大きく成長したものです。

色が白く見た目にも美しいので、御影石(みかげいし)とも呼ばれ、墓石や建築に使われているのを見たことがある人も多いかもしれません。

この花崗岩のもうひとつの特徴は、粒子が粗く多孔質であるということ。

そのおかげで、花崗岩の岩盤は地下水をたくさん蓄えることができるのと同時に、その水は、不純物が取り除かれてきれいな水になります。言わば天然のろ過フィルターの役割を果たすのです。

つまり、花崗岩で構成されている甲斐駒ケ岳のふもとの白州町には、この美しい水が豊富に蓄えられているというわけです。

甲斐駒ケ岳に降った雨や雪が、地下に浸透し、花崗岩によって20年以上かけてろ過された水。それこそが、「日本名水百選」に選ばれ、全国でも有数のミネラルウォーターとして流通している白州の天然水なのです。

そう、シャトレーゼはこの白州の水をスイーツに使うために、この山深い場所に工場を建てたのです。

白州工場の他に山梨県内に2か所の工場がありますが、材料に使用する水は、この白州から汲み上げた水を配送し使用しています。

同時に、八ヶ岳の自然に育まれた牛乳や卵を使ったスイーツを製造する「ファームファクトリー構想」を打ち出し、安全・安心なスイーツづくりをしています。

花崗岩がもたらすクセのないまろやかな軟水

日本には、白州のほかにも全国各地に有名な水の採水地があります。コンビニやスーパーのペットボトルコーナーにも、様々な地域で採水された「名水」が並びます。これらは、よく成分表をみてみると、水の処理方法や硬度がそれぞれ異なります。

そもそも、ひとくちに「ミネラルウォーター」と言っても、そこにはいくつか区分があり、白州の水のように、特定の水源から採水された地下水で、ろ過・沈殿・加熱殺菌以外の処理をしていないもの、さらに地中でミネラル分が溶解したものを「ナチュラルミネラルウォーター」と言います。(海外では定義が異なります。)

そして、そのミネラル分の量とバランスによって、水の「硬度」が決まるのですが、白州の水は硬度16〜22mg /lの「軟水」です。日本人が一般的に飲みやすいと感じる硬度は、10〜50mg/lと言われるので、まさに、日本人が好むおいしい水と言えます。

ちなみに、海外の水のなかには、硬度1000mg /lを超える「硬水」もあります。ミネラル分が高いことで、栄養補給やダイエットなどに活用されることもあるようですが、成分が強い分、味にクセがあるのと同時に、お腹を壊してしまう方もいるようです。特に、小さなお子様には不向きですのでお気をつけください。

 

さらには、どんな地層でろ過されたかによっても、含まれるミネラル分の量や種類は変わります。

例えば同じ山梨県で、やはり名水の採水地としても有名な富士山周辺の水は、玄武岩を中心とした地質のため、バナジウムを多く含みます。九州を代表する採水地の熊本県の阿蘇や大分県の日田は複雑な火山帯のため、さまざまな種類の地層で構成され、硬度が高い水が多いようです。

一方で、白州の水のように花崗岩でろ過された場合は、ミネラルのうち、渋みや苦味を感じやすい鉄やマグネシウムが少なくなる傾向があるとされ、よりクセのないすっきりとした水になります。

素材を生かすスイーツづくりには白州の水が欠かせない

日本人が好む適度な軟水で、クセがないまろやかな白州の水は、なによりスイーツづくりに適しています。

例えば、アイスやかき氷は、果汁や抹茶、小豆など、素材の繊細な味を邪魔することなく伝えてくれるので、すっきりとしたあと味に仕上がります。余分な糖分や添加物を加える必要もなくなるので、安全や低カロリーも実現します。

白州名水かき氷_画像

 

シュークリームやケーキのような洋菓子なら、卵や牛乳などこだわりの材料のおいしさを生かすことができます。

ダブルシュークリーム_画像

 

また、和菓子に欠かせない餡は、硬度の高い硬水で炊くと餡が固く、色も黒くなってしまいます。水は、餡をやわらかく美しい色に炊くためにも重要です。

北海道産大納言どらやき_画像

 

シャトレーゼが目指す、できるだけ添加物をいれない素材の味を生かしたスイーツをつくるには、口当たりがまろやかでクセのない水が不可欠なのです。

その特徴が特に如実にあらわれるのが、ゼリーのような水分量の多いもの。実際に、軟水と硬水とを比べてみると、味だけでなく固さや食感にまで影響がありました。『フルーツのジュレ』のようにみずみずしい食感は、白州の水だからこそ可能になるのです。

こだわりの「水」のことをもっと知りたくて、白州の水vs硬水を比べてみた

「水」は原材料として成分表示に書かれることはありません。ですが、まぎれもなく味を左右する重要な原材料です。無味無臭でクセがないから良いとされる究極の「縁の下の力持ち」ですが、これからの季節はアイスやゼリーを食べる機会が増えると思いますので、あと味や食感にも注目してみてください。